
2025.05.19
りんかい線沿線地域のまちづくりに関わっている方の思いや地域の歴史・現在・未来への考えを知るためにインタビューを行い、共有していきます。
今回は、一般社団法人東京臨海副都心まちづくり協議会事務局長の中林久則さんと同協会議環境プロジェクトチームのリーダーを務める鈴木和博さん(株式会社乃村工藝社 クリエイティブ本部事業戦略部部長)にインタビューさせてもらいました。
——- 臨海副都心の地域づくりで大切にしていることは何ですか?
鈴木和博さん この臨海副都心エリアは歴史がない、重みがないと言われるけど、新しいまちだからこそしがらみがなくのでかなり自由にいろいろな取り組みができます。どうしても離れたところに行くイメージがあり、そこが最初の課題として上がってくるので、皆さんの共通認識として「まずはこっちに来てもらおうよ」という一体感は大事な事だと思います。そして、このまちを作るときに埋め立てをしていて、ただ人工の島をつくればいいというわけではない。実は自然環境がこれだけ揃っているエリアは他にはないという点を大事にすべきだと思います。海が近くにあるのはすごく価値があること、それだけではなく植栽や生き物など豊かな自然環境があり、人工の様々な施設機能がこのエリアに揃っています。
——– 臨海副都心の魅力や面白さは?
鈴木和博さん いつ行っても買い物できるような場所もたくさんあるが、多種多様なイベントが行われる場所でもあり、ライブに参加する人やコスプレなどする人たちからすると聖地のような場所となっています。この意味では、働いている人や常にいる人達だけではない、このエリアに訪れる人たちにも魅力が伝えられています。このまちに色々な人が来ていることも街の魅力であるかなと思います。
中林久則さん 台場地区は商業シーサイドゾーン、青海地区は研究開発ゾーン、有明地区の方はコンベンションゾーンとエリアごとにそれぞれの魅力があります。そのため、1つのエリアだけが突出してたり、または閑散としているような状況になってはならないので、エリアの魅力のバランスが取れていて、一緒に伸びていくように考える事が大事だと思います。
あとは、エリアがまだ特定の色に染まっていなく、住人があまりいないことから、実証実験に向いている場所です。実際に自動運転やモビリティの実験が出来る事がこのエリアのアピールできるところです。
——- まちづくりにおいての課題はなんですか?
鈴木和博さん まちの単位が博覧会仕様になっていて広いです。このため、ずっと課題だと言われていることですが、回遊性や回流性がなかなか実現しづらい。4つのエリアをそれぞれ楽しんでもらえたら良いのですが、次のエリアに移動するのが大変です。しかし、大変でも魅力や楽しみが勝れば「でもいかなきゃね」ってなるのですが、そこまで成立できていない。なので「モビリティで移動を楽にしよう」や「時間差で遊べるようにしよう」などをこれから実現したいという話になっています。
中林久則さん 回遊性の向上と夜になると急に人が減ってしまうところ、あとは規制緩和です。いろいろ実証実験を行なっているのですが、行政や国のルールがそこまで追いついていないのでルールの壁にぶつかってしまう。そこの規制緩和をどう突破していくかが課題です。
——- 環境・サステナビリティの観点からどんな取り組みをしているか
鈴木和博さん まちづくり協議会環境PTとしては次のような活動をしています。
・清掃キャンペーンゴミ拾い年2回(9月・3月)
・施設視察年1回(※2024年度は、ゆりかもめ車両基地)
・チューリップの球根植え(11月 ※2024年度は50万球規模)
・6夏に強い草花を植える活動(6月)
・街の未来をバックキャティングする「りんかい副都心みらい会議」(不定期/過去3回実施)
こうした活動は、毎回平均的に100人以上の街のみなさんが参加して実施しています。
訪れる人々に「キレイな街だね」「花がたくさん咲いているね」とより混んでもらえるような”おもてなし”活動だけでなく、街の事業者同士の繋がりも強くなるような活動にも注力しています。昨年実施したゆりかもめ車両基地視察は日頃見ることがないバックヤードを見学することができ人気ですし、みらい会議には、武蔵野大学の学生さんたちにも参加してもらい、臨海エリアの未来を一緒に考えたりもしました。
中林久則さん 地域内に生息する動植物の調査の他、脱炭素排出量の公表への取り組み(臨海副都心カーボンニュートラル戦略各のひとつ。各事業者がCO2排出量を手計算、取りまとめて情報開示)、非化石化エネルギーの証書(まち単位でのスキームにより、自然エネルギーを使っているという証明書を発行する)といった、まち全体での取り組みが結構珍しいかなと思います。

——- どのようなまちとなることを理想としていますか
中林久則さん これはみなさん考え方があって、どれが正解かわからないです。私は、既にある地域の後追いをしても、認知してもらうのに時間がかかりますし、真似しているようになってしまうと思います。そうではなくて、レインボーブリッジ、ゆりかもめで海を越えると臨海副都心が見えてきて、都内では見られない乗り物やモビリティが普通に走っているような、最先端の技術が至る所にある近未来的な風景が目指す姿なのかなと思います。反対に、環境に配慮されている事や生物多様性があるなど、真逆のコントラストでおもしろみのあるエリアになればいいなと思います。
鈴木和博さん 僕が感じているのは、人間中心ではなくて共生的なモノです。「ロボットも仲間、虫や植物も含めてみんな仲間だよね」という一体感が、ここにくるとワクワクすると感じられるといいなと思います。そのダイバーシティ的なところも担保されている事が、この街の未来像としては正しいのかなと思います。
街の魅力はなんのために必要なのかは、外から色々な人が来てくれるという求心力として大事ですが、内にいるゆかりのある人たちが、この街でよかったなと思い続けてもらえるようになっていけば良いなと考えます。自然と最先端が同居していて、いつ行っても「何かやっている」という街は、ありそうでないと思います。なので、多彩な魅力が重なり合っているところが、この街の魅力だと思います。
——- デジタル技術・AIをどのように活用していきたいか
鈴木和博さん まち側がどう変えていくかというよりも、生活者が変わっていくのでそれにあわせたデジタルツールの使い方が大事になってくると思います。ライドシェアなどが発達するまちで、今までになかったような移動手段を組み合わせた「最適なルート検索」をできると効率的に移動できるようになります。現地でも過ごす時間が増えるので、今までとは異なった体験ができるのはこの街の特色だと思います。また、ここはしがらみが少ない街なので、ドローンや最新モビリティなどの実験を実施する時に、「臨海エリアで行うからルールや規制などを一度除いて実験してみよう」と実施しやすい場所になっています。
——- 最後にみんなに一言
鈴木和博さん 最先端という言葉はなかなか自分ゴトに繋がりにくいですが、このエリアが自分ゴトになっていくような発展のあり方が良いと思っています。最先端や自然との共生など多様な魅力がある中で、まちの皆さんと一緒に進化・成長し続ける、同じ世界観でやっていると良いのかなと思います。
中林久則さん 3つのエリアに特徴があって、まだ何も染まっていない面白いステージもあります。これからワクワクするような展開もあるし、「お台場ファウンテン(仮称)」やテレビ朝日の「東京ドリームパーク」、「トヨタアリーナ東京」ができてくるので第2ステージになってきます。新しい展開になるのでみなさん遊びにきていただけるようになるし、もっと面白くなるので、第2ステージを一緒に組んで盛り上げたいと思っています。
<インタビューを終えての感想>
今回のインタビューを通じて、臨海副都心エリアが持つ未来の可能性に大きな関心を抱きました。中でも、海や自然環境の豊かさ、エリアごとに異なる個性やバランスといった「他のまちにはない魅力」が現在の臨海副都心の大きな強みであると実感しました。
一方で、回遊性やナイトエコノミーにおける課題があることも理解でき、そうした課題に対しては、最先端の技術を取り入れることで解決が図られるべきだと感じました。自然とテクノロジーが共存する持続可能なまちづくりに、ますます期待が高まっています。
さらに、今後「トヨタアリーナ」や「お台場ファウンテン(仮称)」といった新たな施設が誕生することで、臨海副都心は第二ステージへと進んでいきます。現在と未来が有機的につながることで、まち全体がより魅力的で革新的な空間へと進化していくことを期待しています。そうした中で、包括的な視点に立ったまちづくりが一層重要になると強く感じました。
今回は、東京臨海副都心まちづくり協議会事務局長の中林久則さんと、同協議会環境プロジェクトチームのリーダーを務める鈴木和博さんにお時間をいただき、臨海副都心の歴史やサステナビリティへの取り組み、そして今後のビジョンについて直接お話を伺うことができ、大変貴重な経験となりました。
私自身、今後りんかい線沿線地域のまちづくりに携わっていくうえで、地域資源の活用や経済性の向上を図りながら、持続可能なまちづくりを進めるための大きな学びを得る機会となりました。
インタビュアー:大越美波(サステナビリティ学科3年生)